「ねえ、ちょっと…」
突然のことに、あたしは動転し、舌がうまく回らなかった。
『うそ、やばいって。やばいやばい』
心の中では百万言くらい費やしているのに、言葉が口の中から出てこない。
サトシが、狭いところで車を巧みに操り、バックで駐車スペースに入れ始めた。
無言で。何もしゃべらずに。
助手席に手をかけて、片手でハンドルを切る。
あたしはサトシの横顔を直視できなかった。
あれ? こいつってこんなに腕太かったっけ?
不意にそんなことを思った。
車が停まった。
サトシがエンジンを切った。
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