この会話で、あたしの高校時代が決まったと言ってよかった。
待ち合わせのイオンは、家から車で十分ほど北東へ走ったところにある。
最寄りの駅を挟んで反対側にある上、近所の人は駅前の商店街で買い物をするから見つかる心配はないだろう。
そもそも地元ではないから知り合いも少ないし。
いやいや、待て待てあたし。
あたしは別にやましいことをしに行くわけじゃない。
だって、高校時代の友達に会うだけだし。
そう思いながら、あたしは愛車のミラに飛び乗ってエンジンがかかるのもそこそこにアクセルを踏んだ。
駅前はどの時間でも少し混んでいるから、そこを通らず、あえて市役所出張所の方から県道に出て目的地を目指す。
ほどなくして広大な田んぼの向こうに、イオンがその姿を現した。
「待ってろよ」
強大な敵のいる城に向かうゲームの主人公のようにつぶやきながら、ハンドルを握りしめた。
あたしは尚もミラを走らせ、イオンを左に見ながら回り込み、近くにある全国チェーンの紳士服店の駐車場に入った。
自分でもそれがなぜかはわからないけど、とにかくそこに停めて、歩いてイオンに向かった。
「ってか、わかりづらくない? 屋上の駐車場にいるとか思わないし」
サトシに会うなり、あたしは言った。
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