「え? いや…」
「まあ、そうだよな。人妻だもんな。仕方ねえよな」
サトシがあたしの腕を放した。
部屋の奥にある、やたらと大きなベッドに転がった。
「えっと…、あのさ…」
あたしはどう言えばいいかわからず、部屋の入口で立ち止まった。
「まあ、いいや。ちょっと休憩したら帰ろ。俺、今日、睡眠不足で、さ」
そう言って、サトシが身体を横向きにして向こうを向いた。
「あ、サトシ…」
あたしはベッドに座りながら言った。
返事はなかった。
聞こえたのは寝息の音だけだった。
しろよ、キス。
言えなかった。
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