「冗談なんかじゃねぇよ」
サトシがいつもより落ち着いた声で言った。
真顔だった。
「ちょいちょいちょい! らしくないって、マジで」
「なにが?」
「そんな顔。いや、だから、その、あのさ…」
「ちょっと黙れよ」
そう言ったサトシが、あたしの両腕を両手でつかんで上に引っ張り上げた。
あたしは中途半端に万歳するような格好になる。
あれっ? こいつって、こんなに背が高かったっけ?
そうか、ミュールの分…。
あたしは壁に押し付けられる格好になった。
サトシが、顔が近づいてくる。
「ちょっ…」
寸前で顔を背けた。
「やなの?」
「え? いや、そんな…。じゃなくて…」
「じゃ、なんだよ?」
「やっぱり、ほら、ね」
「旦那さんのこと?」
サトシが顔を遠ざけて言った。
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