『俺、必死に逃げたからな。校門出たとこで振り切ったけど、結局、駅前のマックで飯食ってるとこ捕まってさ。ちょうど注文したセットが出てきたとこだったんだぜ?』
「バカだよねえ」
『腹減ってたんだよ。あのとき仲田のせいで大好きなてりやきマックバーガー、一口も食えなかったからな。羽交い絞めにされたからポテトに顔突っ込んで二、三本くわえてさ』
「ほんと、バカ…」
笑いすぎて、おなかが痛くなった。
校庭を斜めに走って逃げるサトシと、その後を追いかける仲田先生の姿が目に焼き付いていて、八年経った今も鮮明に思い出せる。
『でもさ』
『おまえの方こそ、天然なとことか変わってねえな』
「天然じゃないもん」
『天然だよ。全然変わってねえ』
「そんなことないもん」
『んで、何か用だったか?』
「あ、いや、そんなんじゃなくて」
『何だ。「暇電」かよ。あ、ところで、おまえ昼飯食った?』
「え? いや、まだだけど」
『じゃあさ、今から飯行かね?』
「いいけど。でも…」
『ああ、金なら心配すんな。おごるよ』
「そんな心配してないし」
『じゃあ、イオンで待ってるわ。俺、今、そこの駐車場にいるから。着いたら電話してよ。じゃあ』
「あっ、サト…」
言いかけたときには電話が切れていた。
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