それは、あたしの名前だった。
「紗子、何してる?」
旦那の猫なで声に不快感を覚えながら、あたしは戸惑った。
「いいかい? そこを動くんじゃないよ」
「え? なに?」
「いいから。君は何もしなくていい。そこを動いちゃダメだ」
「イヤ! 来ないで」
あたしは一歩、後ずさった。
何かに足をとられてバランスを崩した。
え? どうしたの?
そう思って足元を見る。
いつの間にか、あたしは湖に膝下まで浸かっていた!
あたしは『向こう』に行こうとしてたんだった。
「紗子。大丈夫かい? 危ないから、そこを動いちゃダメだ」
旦那が、こちらに来ようとしている。
「こんなときだけ、そんな態度…」
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