「いや、サッカーに例えるなら、普通のファウルだな。イエローカードも出ないくらいだ。付き合いなら」
「はあ?」
「通い詰めてるとなると…、いや、それでもイエローカード一枚だな。累積があると次戦、出場停止になるが」
「もしかしたら通い詰めてるかもしれ…」
周囲からの歓声であたしの声はかき消された。
「あ~、そこは決めとけよ」
サトシと同じように周りからも落胆の声が聞こえた。
グラウンドを見ると、グラウンドに両膝をついていた選手が頭を抱えていた。
試合が中断した。
ハーフタイムという時間で、これが終わったら後半が始まるらしかった。
「旦那さん、いつも帰り遅いのか?」
トイレから戻って来たサトシが言った。
「日によるかな。遅いときもあるし、帰って来ないときもある」
「大学教授だったよな、確か」
「准教授」
「研究とかなんとかあるんだろ? 遅くなるときの連絡は?」
「あるけど」
「じゃあ、問題ねえじゃん」
「問題ある!」
あたしは大声を出してしまい、慌てて声を低めた。
周囲の視線が、すべてあたしに集まっている気がした。
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